2002年03月22日

似非科学

私は最近、カール・セーガン(Carl Sagan)の『人はなぜエセ科学に騙されるのか』という本を読んだ。昔は魔女狩り、今ではUFOにさらわれた人がたくさんいる、なぜ人々はこうまでも超自然などの似非科学に騙されやすいのか。そして、科学はそれに対する解決法になるということを述べている。

私はこの本のすべてには同意できないまでも、大部分については頷くことができた。科学にとって懐疑は大変重要である。科学はすべての人に証拠を見せ、証明をしなくてはならない。それに対して、似非科学は、確固たる証拠を示せるものは皆無に等しいのである。信じるものは救われる…そう、似非科学に対しては懐疑を持ってはいけないのである。ただ、信じていればよいということなのだ。

科学大国アメリカでも、州によってはダーウィンの進化論を禁じ、神による創造論が唯一正しい説だと教えているところもある。進化論は人々を納得させるだけの証拠がある。それに対して、創造論は聖書に書かれているから正しいということだ。これだけで正しいとするなら、科学の発達していなかった中世で魔女狩りが起こったことは驚くに値しないだろう。偉い聖職者が何か言えばそれが真実になるのだから。

そしてセーガンはこう言っている。「科学には権威はいない。せいぜい専門家がいるだけ」と。

私は科学者の一人であるから、科学に肩入れしているのかもしれない。他の方もこの本を読んで科学と似非科学について考えていただけたらと思う。

人はなぜエセ科学に騙されるのか(上) カール・セーガン(著) 新潮文庫

人はなぜエセ科学に騙されるのか(下) カール・セーガン(著) 新潮文庫

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2001年05月11日

ヒトゲノム

少し前の話になるが、英国の科学誌Natureの無料サンプルをもらった。この無料サンプルは特別な発見や日本の科学者が深く関わった結果などが載った時に、希望者に送ってくれるものである。

今回は、ヒトゲノムが初めて解明されたことで、それについて扱った論文をヒトゲノム特別号として頂いたわけである。で、実際にその論文"Initial sequencing and analysis of the human genome"を読んでみた。これはやはり凄い論文である。

まずは、著者の人数からして違う。普通は数人、多くて十数人といったところだが、今回は1ページ全部が著者で埋まっている。ヒトゲノムの解析には多くの国々のたくさんの研究機関が関わっているのだ。因みに、私が勤務している理化学研究所・ゲノム科学総合研究センター(Genomic Sciences Center)も名を連ねている。そして、Natureに載る普通の論文に比べて分量が多い。総説並みである。それだけ内容があるのである。まあ、人間の全遺伝子情報を解明した論文である。そのぐらいの分量があっても驚くに当たらない。

ヒトゲノム計画については、私が学生の頃からなされていたものであり、その当時から、将来的には人間の遺伝情報がすべて解明されるだろうと言われてきた。そして、壮大で凄いことだと感じていたのだが、その集大成がこの論文に詰められているのである。なんて素敵なことだろう。

今後は、ポストゲノムの時代と言われている。つまり、そのゲノム情報をもとにして、生体タンパク質などの構造や機能の解明に焦点が移されてくるのである。私の行っている研究はまさにこの部分であり、大変にやる気も出てくるというものだ。

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2000年06月29日

複雑系

最近、「複雑系」という科学について興味を持っている。というのも「複雑系 - 科学革命の震源地・サンタフェ研究所の天才たち - 」M・ミッチェル・ワールドロップ(新潮社)を読んだからだ。高校生の頃に、「カオス - 新しい科学をつくる - 」グレッグ(新潮社)を読んだときにも「複雑系」について大きな関心を覚えた。

「複雑系」には科学の分野を超えた統一性を見ることができる、生命の起源やら、宇宙の在り方、社会経済など、どれについても当てはまるのだ。私の扱っている分野は生物物理化学とでも呼べるものだ。生物・物理・化学が全部入るなんて節操のない、と考える人もあろうが、「複雑系」はもっと大きな枠組みを持っている。私はそこに興味を持ったのかもしれない。大昔は、哲学や数学などが一緒くたに扱われていたことを思えば、そうおかしなことでもないだろう。

この「複雑系」を知って、私は、科学者としてできるだけ広い視野を持って、これからの研究をしていきたいと強く感じた。

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